連載コラム
バッグ業界の変遷と               構造変化
久 野 康 一

            第5回(全6回)

  前回は、バッグ業界を席巻したブランド・ブームを、売り場側の動きを通じて取り上げた。これ以降、バッグ業界は、売り場から新たなうねりが起こり、変わらざるを得ない状況になっているように思う。
 今回は、新たな波を受け大きく動こうとしている業界図を説明しておこうと思う。

アパレルブランドとナショナルブランドに占拠されるバッグ市場
 バッグ業界はこの先、どんなふうになっていくのだろう。
 バッグ問屋が長い間パートナーとしてきた百貨店は、ナショナルブランドの直営ショップを展開する“場所貸し業”感をますます強めている。誰でも高額ブランドを買い漁れるほど日本経済の水準が上がった昨今、百貨店とバッグ問屋との蜜月期は、もうすでに終わりを迎えているのだろう。

  そのうえここ数年は、“アパレル業界の参入”という強いパワーに圧倒されている。
 オンワードやイトキンなど、大手のアパレルメーカーがオリジナルバッグを作り始めたのは、もうずいぶん前のことだ。1970年代前半まで独立した分野だったバッグは、一般消費者のファッションへの意識が底上げされるに伴って、「ファッションの一部」として見なされるようになっていった。今でこそバッグがファッションの一部であることは当たり前のこととなっているが、「バッグだってファッションだ」というのがすごく新しい視点だった時代もあったのだ。

  売り場側にとっても、ウエアと同じコンセプトでバッグが展開できればユーザーに提案しやすい。ユーザーだって、コーディネート販売されているものを買う方がずっと買いやすい。その構図の中にバッグ業界のプロは不在だけれど、そんな存在がなくても、中国で思ったとおりの商品は生産できる。商品と売り場があれば、ビジネスはどんどん成長していく。

  90年代に入り、そうしたアパレルブランドのバッグは爆発的に広がった。アパレル消費市場が冷え込んできて、アパレル業界が服以外に活路を見出すことを本格的に模索し始めたのだ。そして今では、どこのアパレルショップでもバッグをはじめとしたファッション雑貨を置くのが普通になっている。

  銀座あたりを歩くと、街並みはアパレルのラグジュアリーブランドやナショナルブランドの出店で埋まっていて、もう既存のバッグ問屋のいられる余地なんてほとんどなくなってしまったようにみえる。そんな中、問屋はどうすればいいのだろう。小売り戦略をどう考えていけば、今後を生き残れるのだろう。


問屋の未来図を変えていくかもしれないSPA
 最近出てきた変化の兆しに、問屋のSPAへの進出がある。
SPAというのは、「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略だ。製造から小売りまでを一貫して自社で行うアパレル業のことを指している。「ユニクロ」のファーストリテイリング、「無印良品」の良品計画、「コムサデモード」ほかを展開するファイブフォックスなど、このやり方で成功している企業は増えている。今では他の業界でもこの、製造小売りのやり方は浸透しており、バッグ問屋でもこのSPAに進出しようとする所が出てきた。

 きっかけは、バブル期の出店ラッシュだった。大がかりなショッピングセンターのオープンはとどまるところを知らず、バッグ専門店にも出店の話が回ってくる。 それは景気が失速した後もなかなか途切れることがなかった。巨額な出店投資に、専門店が二の足を踏むようになった頃、替わりに出店し始めたのが、問屋だった。小売業では利益幅が少なく、家賃を考えるとうま味は少ないが、問屋なら利益が確保できるという読みがあったのだろう。

  それに、いくら企画をして商品を作ったところで、小売店のバイヤーから見向きされなければその商品は店頭に出ることさえない。そんな現状で、自前の売り場を持つことは、商品マーケティングの側面からも大きな意味がある。 そもそも、セレクト型の従来の専門店がこれほど発展してきたのは日本独自の現象だ。ヨーロッパにもセレクト型のショップはあるが、主力はSPA型だ。これはたぶん、日本の小売店が戦後の混乱期にスタートしたことが背景にあるだろう。連載の第1回で触れたように、モノを作る者と、それをかき集めて売る者が別々だった当時の構造が、そのまま日本型の小売りの構造になっていったのだろう。

  けれど、もしこれから自社企画でモノ作りをして、在庫を持って専門店に1本ずつ買ってもらう従来型の問屋を立ち上げようとしても、それは不可能に近いことだろう。在庫なんて半年後にはゴミ同然になってしまうし、1億くらいあっという間につぎ込んでしまう。このやり方では、融資すらどこからも受けられない。 これからはやはり、背景や素材など、その商品についての知識を熟知して売ることができるSPAの時代がやってくる。そう替わっていかざるを得ないだろうと思う。


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