連載コラム
バッグ業界の変遷と               構造変化
久 野 康 一

            最終回(全6回)

 前回は、バッグ業界に訪れている新しい波、製造から小売りまでを一貫して行うSPAについて取り上げた。
 最終回の今回は、今後のバッグ業界の展望について、僕なりの予測をしてみようと思っている。

問屋以外の動きがどんどん活性化している
 ここ10年ほど、アパレル業界を先駆けにSPA(製造小売業)という形態が出てきた。バッグ業界でもこれを取り入れ、問屋が小売りを兼業する所も出てきている。
 SPAだと、問屋→小売りの流通段階を短縮させるので、利幅が大きくアップする。それに、商品を小売りのバイヤーのチョイスではなく問屋側の選択で店頭展開できるので、作ったモノを必ず販売チャンネルに乗せることができる。また消費者からの情報も直接入手できるので、商品開発にリアルに生かせる。
 ただ、これは欠点に通じることでもある。生の情報であればあるほど、企画はどうしても消費者寄りになり、売れ筋を追求しがちになるだろう。それに、同業他社からの仕入れがないため、偏った品揃えになりやすく、ショップとしての魅力は薄くなるかもしれない。

  SPA以外の道はどうなるだろう。
 今、もっとも勢力の強いナショナルブランドは、ますます勢いづくだろうと思う。日本人の消費意欲はおそらく今、世界一だと思う。ルイ・ヴィトン・ジャパンが、ここ数年のバッグ業界の売り上げトップという事実を見ても、今後世界のブランドが日本上陸を目指して進出してくるだろう。ナショナルブランドが今よりももっと市場を拡大するのは、おそらく間違いない。

  ライセンスブランドを集積した、従来型の売り場も、それなりに残っていくだろう。丸井などのバッグ売り場を見るとわかるが、つねに一定の購入者層を抱えている。ただ、一つのブランドの生存期間が短くなり、次々に新しいブランドを供給しなければ生き残れない、利益の出にくい商売になっている。この傾向はますます拍車がかかり、ずいぶんと体力のいる形態になるだろう。
 アパレルやシューズなど、他業種からの参入はどうか。これもいっそうの拡大路線をたどると見られる。マーケティングの観点からいえば、こうした業種はバッグ業界よりはるかに進んでいる。進出数がますます増え、太刀打ちできなくなるだろう。

ナショナルブランドに飽きたユーザーが戻ってきた
 なんだか元気がなくなるような予測ばかりしてしまったが、気を取り直して自分自身を振り返ってみよう。
 では、アイソラみたいな、プライベートブランドと呼ばれる、いわゆる問屋はどういう形態で生き残ることができるだろうか。この業種は、利益率が低い割にはリスクが大きい。これは、と自信を持って送り出した製品でも、売れなければそれまで。莫大な在庫は数ヶ月〜1年先には負の財産となる。だからといって個性の薄い無難な商品を作っていたら、あっという間に目の肥えたユーザーに見向きされなくなり、過去に消滅していった企業たちと同じ運命をたどるだろう。

  僕は、大きな規模に拡大せずに、個性的なモノを作ってニッチ市場を狙うのが、これからの正攻法だと思う。最近、「もうナショナルブランドのサイフは飽きたので、アイソラのユーザーになった」という嬉しいメールをよくもらう。もちろんまだまだ少数派なのだが、こういう人たちがこれからの僕たちの行方を握っている。
 この人たちを満足させるだけの商品を、僕たちが供給できるかどうか。これからのカギはそこにかかっている。もう一度、80年代の頃の、熱い物作りへの思い、パワーのある企画力を取り戻すことができれば、きっと夢ではないと僕は思っている。

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