エピソード]V 志賀草津テレマークツァー

バックには笠岳、遠くにはくっきりと北アルプスのスカイラインが見えています。こんな上天気ってなかなかめぐり会えません   のぞきの上にある渋峠ヒュッテ前です。ツァー届出を提出して、出発直前のテレマーカー3人組

’04〜’05のウィンターシーズンがもうすぐ終わろうという4月初めになって、ぼくが今年から始めたテレマークスキーの師の青木さんから、テレマーカー3人で志賀〜草津ツァーに行かないかというお誘いがあった。雪崩が怖いので、雪がまだ硬い朝のうちに志賀を出発して、昼には草津からヘリコプターで戻ってきてしまおうというデラックス版のプランです。こればっかりは断れませんね。映画「私をスキーに連れて行って」で使われたコースを、ヘリコプターを使って滑ってしまおうという、誰もが夢見ているツァーなんですから。参加はリーダーの青木師、テレ1年目の兄さん、同じくテレ初心者のぼくです。

大斜面頂上の兄さん。バックには芳ヶ平、草津の町並み、そしてその後ろに上越の山並み。関東方面にはさすがに春霞が見えます
大斜面途中で撮影中の青木師。こんな広大な斜面がぼく達だけのものなんですから
大斜面途中で息切れしているところを、師にフォーカスされてしまった
一本杉の雪の原っぱで宴会中です。レバーペースト、ブルーチーズ、クラッカーの臭い3点セットは評判よかった
久しぶりに6時に起きて表を見たら、無風で雲ひとつない、穏やかな朝です。さすがぼくは晴れ男、まず天候は味方につけました。湯田中に8時に集合して、硯川からリフトで上がって、堅い氷みたいな斜面を滑り降りて、渋峠ヒュッテでツァーの届け出をします。そしていよいよ「私をスキーに連れて行って」でも撮影されていた斜面に向かいます。

去年ぼくも参加した志賀高原観光協会主催のときのツァーコースと違って、今日はベテランガイドにスキーでは上級者2人の編成なので、一番奥の最大斜度38°という大斜面に向かいます。「表層雪崩は助かる可能性があるけれど、今日のこの斜面で起きやすい全層雪崩ではぜったいに助かりませんから」などというありがたいご忠告を受けて斜面をトラバースするのだけれど、日当りのいい場所だともう融け始めていて、ズルッと滑ると冷や汗が流れる。これじゃ雪が緩んだら、怖くて滑ることなんかできないな。とりあえずは全速力でトラバースして大斜面上部に出た。草津の町並みや芳ケ平がきれいに見渡せ、途中に立ち寄る予定のヒュッテの赤い屋根まで見える。そしてシュプールが1本も入っていない斜面を3人で独り占めして滑り降ります。聞こえるのはぼく達パーティー3人の雪を削る音だけ、動いているものもぼくたち3人だけ。これって贅沢すぎます。

写真を撮ったり休んだり、気ままに降りてきて振り返ると、大斜面にはぼくたちだけのシュプールが残っています。「これってスキーNOWの世界じゃん」。大斜面滑降のあとは平らな雪原をひたすら歩いて、休憩地の芳ヶ平ヒュッテに向かいます。全員テレマークだから歩くのはスキーよりも楽だけれど、リーダーの容赦ないスピードに付いていくのがやっと、力尽きる寸前にヒュッテにたどり着きました。リーダーは若いときにはXCスキーのレーサーだったのだから、ぼくたちが付いていける訳がないでしょ。今度から少しは遠慮してください。

小休止のあと、気温が上がって緩んだ雪にブレーキをかけられながら、登ったり降りたり歩いたり、一本杉の雪の広場を目指します。ぼくは去年の経験があるので、ディバッグのなかはワイン、チーズ、レバーペースト、ウィスキー、水割りセット。もう大人の遠足です。車座になって、呑んだり食べたり。食べ物ってこんなにおいしいのですね。ぼく達よりも遅くスタートした奥志賀高原の杉山スキースクールの1隊が、宴会しているぼく達を羨ましげに横目で睨んで追い抜いていく。

そして草津国際スキー場に着きました。師がなにやら電話をすると、ヘリコプターの絵が書いてあるミニバンが迎えに来ます。乗り込んで10分も走ればヘリポートにいます。そして今回のプランのハイライトの「ヘリでご帰還」です。爆音とともに志賀高原からのヘリが着陸してきました。カナダでヘリ・スキーをやって以来だな、デジャブな光景に見とれてしまった。そそくさと乗り込むとすぐにヘリは浮き上がります。サービスで白根のお釜のうえを飛んでくれたので、不思議なエメラルド色の池だとか、さっき地上から見た滝だとか、圧巻はぼくたちだけのシュプールが刻まれた大斜面の上を飛んで、渋峠ヒュッテ前に着陸です。
そんなこんなで、9時ころに渋峠をスタートしたツァーは、途中に雪上の宴会をいれながらも、草津には12時頃には着いていた。正味約2時間半くらいの所要時間ですね。そしてヘリで帰ってきた後、山頂のヒュッテでビールとランチを食べて、湯田中に下りて温泉で疲れをとって、しばらくは昼寝して、夜には来年の再会を約しての大宴会になったのは、言うまでもありませんね。青木師と知り合い、テレマークスキーを始めて、ぼくのウィンターライフはみょうに充実してしまった。今年はこれで終わるけれど、来シーズンが楽しみで、もう胸がわくわくする。

ヘリからみた白根のお釜。きれいなエメラルド色だけれど、毒入りだ

ヘリから見た出発点にもなっている渋峠ヒュッテ。ヘリはこのそばに着陸します

いい光景だな。日本国内とは思えない。そしてツァーは終わりました


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