エピソードV
1級合格
額に入れてだいじに飾ってあります
 ぼくは37歳の時にS,A,J,1級に合格しました。もう10年以上前のことですが、長年の目標だったのでとても嬉しかったことを思い出します。
 ぼくが受験したのは「上越国際スキー場」で、当時は「総合滑降」「パラレル」「ウェーデルン」「ゲレンデ・シュプング」「ステップターン」の5種目でした。たしか13人くらいの受験者でした。そして検定が始まると、「かならずゼッケン番号と名前を大きな声で検定員に教えてください」といわれました。一緒の受験者はみんな20歳台の人たちだから元気よく叫んでいるけれどぼくは一人だけの「オッサン」だから大きな声が出ないんですよ。あれは恥ずかしかったな。

 なんとか無事に終わって、結局13人中3人が合格しました。そして1級の合格者だけが別室に入れられてS,A,J,に入会させてもらい、晴れて合格証と憧れの白いバッチを貰うことができたんです。もう夕方になっていました。「今日は滑るのを止めて、祝杯をあげないか」とあとの2人に呼びかけたら、「いいですね、さっそく下の町の飲み屋に繰り出しましょう」ということになって、3人でスキーブーツのまま宴会を始めました。
 20代半ばの2人と40近いオッサンとの3人連れは、3人とも何年もこの日のために努力してきたんですから、もう嬉しくて嬉しくて大宴会になってしまいました。そして宴会が終わってみんなと別れて宿に帰ろうと思ったらもうフラフラで、スキーとストックと合格証を持ったままあっちで転びこっちでも転びで、ようやく宿にたどり着きました。宿に帰れなくてこのまま凍死するんじゃないかと思いましたよ。
 次の日二日酔いの頭で起きて、友人みんなに電話で自慢しまくり終わってハッと気が付いたら、さァ大変。合格証がないんですよ。昨晩何処かで落としてしまったらしいんです。バッチはだいじにポケットに入れておいたので無事だったけど、この長年の努力の結晶の合格証を無くしてしまったんですよ。しょうがないから、もしかしたら再発行してくれるかもしれない、頼み込んでみようと思って事務局に行きました。
「すいません、合格証を落としてしまったんですが」
「お名前をどうぞ」
「ん?」
事務局には昨日の3人全員の合格証が落し物で届いていました。だからぼくの合格証はしわくちゃで、ちょっと滲んでいるんです。
親友が作ってくれました。今まで貰ったものの
なかでも一番嬉しかったものです

これが憧れの白バッチです



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