エピソードZ
ムッシュ・ベルトラン フロム フランス

ぼくは162cm、かれは180cmオーバー。でも足の長さはかわらないぞ
まわりに言葉のわかりそうな人がいそうもない時に外国人がいると、ぼくは話しかけるようにしています。ぼくでも役に立てることがあるかもしれないですからね。 

2002年3月16日のことです。ぼくはその日もスキーを楽しもうと思って、湯田中発の路線バスで志賀高原に向かっていました。そしたらまだ町中の交差点で、バス停でも無いのに強引にバスを止めて、外国人が乗り込んできました。地図を開いて、志賀高原を指して、「OK?」と言えば、バスの運転手さんも「イエス」だけです。これはもうぼくの出番でしょう。さっそく話しかけました。
銀行のコンピューターのシステム・エンジニアで、日本には2ヶ月おきに来ているという話で、今回は3日後に帰国するので、一人で志賀高原にスキーを楽しみに来たといいます。そのわりに日本語は全然ダメだな。フランスのスキー・リゾートのクーシュベルから来た今年32才のムッシュ・ベルトランです。クーシュベルって全然知らなかったけれど、あとで調べたらフランスでも有数のリッチマン専門のスキーリゾートのようです。

 地図で志賀高原の概要を説明して、だいたいの費用を教えて、もうすぐバスの終点というときに、アレッ、ベルトランさん、スキーも何にも持っていないじゃん。「スキーはどうするの?」と聞いたら「レンタル」といいます。日本語がなにもわからないくせに、スキー一式をレンタルして、遊んでバスでまた帰るって、それはムリですよ。「いいよ。今日は別に予定も無いから、ぼくがガイドしてあげるよ」ということになってしまいました。

 ぼくが保証人になってスキー一式をレンタルして、グローブまで借りて、さて出発しようとしたら、「アー ユー グッドスキーヤー?」とぼくに聞くから「イエス。アンド ユー?」と聞いたら「オフコース イエス」といいます。滑り始めたらたしかに速いし、テーブル・トップは軽く飛んでしまうし、グッドスキーヤーでした。お互いにスキー狂どおし、言葉はたいして通じないけれどもとても楽しい日を過ごしました。

体がでかいから飛ぶと迫力が違います 相棒が上手だったので、久しぶりにぼくも張り切ってしまいました

 「今日は何時の電車で帰るの?」と聞いたら別に予定はないとのことです。「安い宿を探してあげるから、今日はこのへんで泊まって明日スノーボードで遊んでから帰りなよ」といったら「OK、OK」ですよ。その夜は友人もむりやりつき合わせて、居酒屋で一杯呑んで、カラオケで歌って踊ってドンチャン騒ぎです。これもまた楽しかった。そうそうベルトラン、フランス人でもビートルズを歌っていました。

ボードかなり迫力ものです
 次の日は「ごりん高原」でボードをレンタルして、一日スノーボードです。「スノーボードで楽しいのはオフ・ピステだよね」などといいながら、どんどん林の中に入っていってしまいます。「日本ではコース外の滑走はパトロールに見つかるとうるさいんだよね」というと「アイ キャント アンダースタンド ジャパニーズ OK フォロー ミー」といいながら、また入っていってしまいます。「いいや、もう雪崩もないだろ」ということで、この日は一日オフ・ピステを付き合ってしまいました。
 結局2日間とも付き合ってしまい、久しぶりに大笑いのスキー行を楽しむことができました。「クノがフランスに来たときには、ぼくが案内するからね」ということで別れたけれど、いつかは2人でクーシュベルを滑ってみたいと思わせる、いいヤツだったな、ベルトラン。ぼくは53才にもなって、相変わらず軽いヤツだな、と友人からまた笑われそうな週末でした。
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