「寄せ」で分かるサイフ職人の技量

もうすぐ死語になりそうな危険性のある言葉に、「菊寄せ」という言葉があります。だいたいのサイフは四隅のヘリの部分を「寄せ」という技術でまとめています。直角に合わさった部分の余分な革を「寄せネン」と呼ばれる道具を使って、ヒダを重ねていってまとめる技術のことです。ここを見ると大体その職人さんの技量が推し量られます。
この状態からヘリを返していきます
寄せネンを使って余分な革をたたんでいきます
あとはミシンをかけるだけ。刻んだところが熱で焦げています
アイソラのLineaカリオカなどを作ってくれているHIRO達の習ってきた仕事では、ここはかならず13回で寄せます。そして菊は26枚の花びらをもっているのでその半分の回数で寄せるので「菊寄せ」と呼ばれるようになったんでしょう。人間国宝の芸術性や技能オリンピックにあるような技術以外にも、町の職人さん達はそういうところに自分たちの技を磨いていたんです。

ヨーロッパのサイフは、作り方がちょっと違うせいもあって、ぼくが「パタパタ」と呼んでいる方法を多用します。それは余って要らない部分をカットして、両側の「ヘリ」を倒して、合わせ目の部分を焼きゴテで押さえつける方法です。これはこれでぼくも好きな方法なんだけれど、やっぱり日本の製法に合っている、そして職人とスキ屋さんが協力して作っていくこの「寄せ」という技術が、ぼくは好きです。

最近、中国やタイの工場でどんどん技術が上がってきたというけれど、それらの国の工場では職人というよりも工員の仕事という取り組みだからこういうところには気をまわさないと思う。そして今のように中国製のサイフを相手に価格競争を強いられる限り、国内の職人さんたちのあいだでもこのような技術は廃れて、職人の技を楽しむ事ができなくなってきています。現実にどんどんそういった職人さん達は減ってきて、年々「寄せ」が汚くなってきているのはとても残念なことだと思います。

寄せネン 先端に電気で熱を入れられるようにしたコテの一種で、寄せながら糊を乾燥させて接着させる道具

参照
グッチ、フェンディ、プラダのサイフのヘリ

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