COACHから60年代を考える
1978年頃のことです。革屋さんで在庫を掻きまわしていたら、なかなか良い革があったんです。オイルがちょっときつく入っていて、重すぎるのが難点だけれど、それまでに見たどの革よりもナチュラル感がよくでていました。
「この革いいね。どこの革?」
「ザルツ・レザーといってアメリカの革です。コーチが使っていますよ」
 それまではコーチって、アメリカのちょっと脂肪のつきすぎたおばあさんが、リタイアした旦那と海外旅行に行く時に持っていく、実用一辺倒のつまらないバッグだとばっかり思っていたんです。ざっくりしたデザインにブラスの金具、たしかにパイピングのテクニックは面白かったけれど、そんなに注目はしていなかったブランドでした。でもその気になってよくチェックすると、革の風合いを生かしたなかなかいいバッグだなと、考え直したものです。
 

今日三越で開催している「COACH−60年のアメリカンスタイル」を見に行ってきました。COACHって、60年間アメリカのバッグシーンを引っ張ってきた、なかなかすごいブランドだったんだ。60年代後半のサイケデリックやフラワーチルドレンを思い出させる色使いや、まだショルダーバッグという肩提げ型が出てくる前の懐かしい手提げバッグのデザインに、つい昔を懐かしく思い出してします。ぼくは1971年にバッグ業界に入ったので、その残り香くらいしか記憶にないけれど、ファッションがようやく一般的になってきた時代の楽しさがよくわかる、おもしろい催事でした。

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